法人PCに不可欠なリプレイス業務の方法や
ポイントを解説

PCの経年劣化や故障、新OSやアプリケーションへの対応など、企業はPCリプレイス(入れ替え)を定期的に行う必要があります。リプレイスにはいくつかの方式やポイントがあり、PCやシステムの運用環境などに応じて最適なやり方を選択することが重要です。本記事では、法人PCのリプレイス方式や注意点、情シス部門の担当者が押さえておくべきポイントをご紹介します。

PCリプレイス(入れ替え)の目的と最適な時期とは?

企業では、PCの劣化や故障により生じるシステム・業務への悪影響を予防・改善するために、定期的にPCを交換する必要があります。このようにPCの交換を行うことをPCリプレイスと言います。

ITの世界は技術進歩が速く、システムやソフトウェアはすぐに時代遅れのものとなります。スムーズに機能していたPCもデータ量が増大するにつれ、動作が遅くなり作業効率が落ちます。さらに古いPCを使い続けているとフリーズしてしまい、業務自体が停止に陥る可能性もあります。
つまり、PCリプレイスは単に劣化や故障したPCを修復する以上の意味合いがあるということです。

PCリプレイスを行う必要性

PCにはディスク(SSD/HDD)やバッテリーなど消耗品が多く搭載されており、これらは経年劣化していきます。特にディスク(SSD/HDD)はデータ保存を担うパーツであり、故障するとデータを消失する恐れがあります。

また、古いPCは対応パーツがなく、修理ができない場合や修理コストが嵩むことがあるうえに、動作が遅くなるので作業効率が落ちます。一方、新型のPCは処理能力が高く省電力化も進んでいるので、リプレイスした方が作業面、コスト面においても効率的です。

さらに、新しいOSやアプリケーションとの互換性の問題も懸念されます。新しいOSやアプリケーションは、より高性能なハードウェアや最新の要件を必要とすることがあり、古いPCでは正常に動作しない可能性があります。特に、2021年10月にリリースされたWindows 11は、ハードウェア要件がWindows 10から変更されており、古いPCでは対応できない場合があります。

このように、データの保全、コスト、利便性の観点から、PCリプレイスは不可欠であると言えます。

PCリプレイスに最適なタイミング

一般的には、パソコンの更新サイクルは3年から4年程度が推奨されています。

稼働時間によって異なりますが、一般的にHDDの寿命は3~4年、SSDは5年程度です。これらの期間を過ぎると、故障率が急激に上がり、パフォーマンスも低下していくため、3~4年がリプレイスとしての最適な時期といえます。

なお、法人PCは家庭用に比べて稼働時間が長いため、より寿命が短く故障リスクも高い傾向があるので、計画的にリプレイスをする必要があります。

では、実際にPCリプレイスはどのように行えばよいのでしょうか。以下でその方法と特徴を見ていきます。

PCリプレイスの4つの方式とその特徴、メリット・デメリット

PCリプレイスの際には、連動して新システムへの移行が必要であるため、システムの利用状況に応じて、リプレイス方式が異なります。以下では主な4つの方式の特徴を解説します。

なお、本記事で解説するリプレイス方式は、従来のクライアントサーバシステム視点での方式であり、システムとPCの連動性が低いSaaSといったWebシステム系の場合は異なります。

一括移行方式

PCやソフトウェアなどシステムの構成要素を一括ですべて入れ替える方法です。
リプレイス作業を一度だけ行えば良いのでコストや時間がかからないというメリットがあります。一方で、システムを全面停止する必要があり、その間業務をどうするか検討しなければならず、エラー発生のリスクも高い点がデメリットです。

並行移行方式

並行移行方式は、現在使用しているPCと新しいPCを並行運用させて、比較検証しながら移行する方法です。
リプレイス前のシステムを稼働させ続けることで、新システムに問題がある場合でもシステムを止めずに運用できます。しかし、2つのシステムを同時稼働させるため費用がかかり、保守管理の運用負担も大きくなります。

パイロット方式

パイロット方式は、一部の部署で現在使用しているPCから新しいPCに切り替え、運用を確認して問題がないと判断した後に、全部署のPCを入れ替える方法です。
リプレイスの課題を小さい規模で洗い出すことができ、課題の解消法を蓄積してから、全体のリプレイスを行えるため、エラー発生に伴う影響を最小限に抑えられる点がメリットです。全体のリプレイスまで時間を要しますが、一括移行をするのが不安な場合に有効な方法です。

段階移行方式

段階移行方式は、部門やチームなど、小規模な単位で新しいパソコンへの移行を段階的に進める方法です。同時に停止するパソコンの数を最小限に抑え、業務への影響を軽減することができることがメリットです。
一方で、パイロット方式と同様に、全体のリプレイスまで時間を要するため、IT担当者の負担やコストが増加する可能性があります。また、古いパソコンと新しいパソコンが混在する状況では、トラブルを避けるために慎重な運用が必要です。

リプレイス方式メリットデメリット
一括移行方式

・コスト・時間があまりかからない

・システムを全面停止する必要があり、エラー発生のリスクが高い
並行移行方式

・システムを稼働したまま移行できる

・2つのシステムを同時稼働させるコストがかかる
・保守管理の負担が増える

パイロット方式・エラー発生の影響を最小限に抑えられる・全体を移行するまで時間がかかる
段階移行方式・移行に伴う業務への影響が少ない

・全体を移行するまで時間がかかる
・古いパソコンと新しいパソコンが混在する状況となるため、慎重な運用が必要

 

PCリプレイスの一般的な手順

前述のような方法でリプレイスを実施した後は、一般的には以下のような手順を経て、ユーザーの元に新しいPCが配布されます。

① キッティング
キッティングとは、新しいパソコンを導入する際に、各種アプリケーション設定やセットアップを行ってユーザーが使用できる状態にすることです。キッティングには、PCの開梱と組立、周辺機器との接続、OSのインストールと環境設定や ネットワーク設定など、あらゆる作業が含まれます。

②データ移行
PCをリプレイスするタイミングでは、これまで利用していたPCから新しいPCへのデータ移行が必要です。
不要なデータを移行すると、ディスクやファイルサーバなどのストレージ容量を無駄に消費してしまうため、移行の前に事前にデータの整理を行います。また、データ移行中にPCが使えず緊急の対応ができないという事態に陥らないように、データ移行の時間は慎重に検討しましょう。

③古いPCの廃棄
古くなったPCは、法律に乗って適切に廃棄する。廃棄方法は購入か、レンタル・リースかによって異なります。
購入の場合は、法人PCはメーカーによる回収とリサイクルが義務づけられているため、メーカーに回収してもらうか、産業廃棄物処理会社やPC処分・リサイクルサービスの業者に依頼をします。法人PCには、顧客情報や企業の内部情報などの機密データが入っているため、データが完全消去されていることを必ず確認しましょう。

法人におけるPCリプレイス時の注意点

法人におけるPCリプレイスの場合、重要かつ大量のデータを移行するため、データの一時保管方法や場所、手順、移行後の削除などのサポートを情シス部門が行う必要があります。

また、PCリプレイスは利用者自身が実施するのか、もしくは作業員が行うのかも検討すべき事項です。PCリプレイスに伴うユーザー負荷を抑える場合は、情シス部門が外部ベンダーに作業委託を検討するのが良いでしょう。

OS、アプリ、システム変更などによるユーザビリティや、PC利用方法の変化も事前に把握しておく必要があります。これに伴い、情シス部門がユーザートレーニングを行う必要があるのかを検討しましょう。

こうした点に注意して法人PCはリプレイスを行うことが重要ですが、以下では情シス担当者が押さえておきたいより具体的なポイントについて見ていきます。

法人PCをリプレイスする際に
情シス担当者が押さえておくべきポイント

PCリプレイスに関する情報を整理する

まずはリプレイスするPCのスペックや必要台数、さらに導入拠点別の台数、スケジュールなど、PCリプレイスに関する基本的な情報を整理します
また、現行のPCの課題や、運用方法なども把握しておくことで、リプレイス後のPCに必要な機能やスペックなどに関して適切なものを導入できます。

リプレイスによるリスクを考慮した計画を立てる

リプレイスは計画通りにすべてが進行するとは限らないため、不測の事態に備え、予備日を設定するなど余裕を持たせたリプレイススケジュールを策定することがポイントです。そうすることで、予期せぬトラブルが発生した際にも、リプレイスを中断し、トラブルの原因を解決したのちに再度リプレイスが行えます。

リプレイスしたPCのライフサイクルを把握する

PCには調達から、導入、運用、保守、撤去・廃棄に至るライフサイクルがあり、それぞれの工程で管理業務が発生します。
このライフサイクルを事前に把握(見える化)することで、いつ・どのPCをリプレイスするかの計画策定が容易になり、管理業務の無駄を解消できます

こうしたPC運用管理の改善方法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
情シスの業務負荷を劇的に軽減!PC運用管理を改善するには?

なお、PCの調達から運用、廃棄までの一連のライフサイクルを最適に管理するための手法をPCLCM(PCライフサイクル管理)と呼びます。詳しくは以下の記事をご覧ください。
PCLCM(PCライフサイクル管理)とは?重要性と対策方法をご紹介

信頼できるベンダーに相談する

PCリプレイスを自社だけで行う場合、情シス部門の業務負担が増加する可能性や、予期せぬトラブルへの対応が不十分になるリスクがあります。

そこで、信頼できるベンダーに相談し、アウトソーシングをすることが有効な選択肢です。専門のベンダーに任せればスムーズなリプレイスができ、情シス部門はシステム構築やIT戦略策定など本来力を入れるべき業務にリソースを割けるようになり、組織全体の生産性向上も図れます。

PCリプレイスをトータルサポートする「Wave PC Mate」

NTTデータ ウェーブでは、PCの調達から導入、運用、保守、撤去・廃棄まで、PCライフサイクル全体を通したトータルアウトソーシングサービスである「Wave PC Mate」を提供しています。

特徴としては、前章で紹介した各種リプレイス方式でのリプレイス計画の立案から、導入時のセットアップを実施している点が挙げられます。さらに、リプレイスしたPCのライフサイクルを管理し、利用後のPC回収スケジュール調整、回収業者の手配なども可能です。これらの対応をすべて含めたサービス体系であるため、リプレイス時に随時発生するコストを抑え、標準化を行えます

このように、Wave PC Mateは情シス担当者がPCリプレイス時に押さえておきたいポイントを網羅し、安定的にPC運用を行えるサービスをご提供できます

リプレイスを含めたPC運用の外部委託先を選定する際のポイントについては、下記資料をご覧ください。

お役立ち資料
法人PC運用の外部委託先選定時のポイントとは?
法人PC運用の
外部委託先選定時のポイントとは?
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このコラムを書いたライター
Wave PC Mate 運営事務局
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Wave PC Mateは、NTTデータ ウェーブが提供するハードウェアの調達から導入、運用管理、撤去・廃棄までのPCライフサイクルマネジメントのトータルアウトソーシングサービスです。本サイトでは、法人企業のPC運用管理業務の課題解決に役立つ様々な情報をお届けします。