ITインフラ運用の作業内容とベストプラクティスを解説
本記事では、ITインフラ運用の概要や作業内容、運用するうえでのベストプラクティスについて解説します。
ITインフラ運用とは
ITインフラ運用とは、社内のIT業務において基盤となる設備やシステム全般(ITインフラ)を運用することです。
ハードウェアであるPCやサーバー、ネットワーク機器、ストレージに加え、ソフトウェアであるOSやミドルウェア、アプリケーションなどを運用することを指します。
あらゆる業界でITの活用が当たり前のものとなっている現在、ITインフラ全般の運用を効率化・安定化させることは、企業の生産性や競争力を維持・向上させるうえで不可欠となっています。
ITインフラ運用と保守との違い
ITインフラ運用と関連している業務に、保守があります。ITインフラ運用と保守は類似しているイメージがありますが、厳密には異なります。
ITインフラ運用は、前述したようにネットワークやサーバー、データベースをはじめとするインフラ全般を管理することです。システムの可用性や安定性の維持、セキュリティの確保、パフォーマンスの向上などを通して、サービスを確実に提供するために必要なリソースを最適化することを目的としています。
一方で保守とは、機器やシステムがトラブルなく安定的に動作するうえで必要となる活動全般を意味します。ハードウェアやソフトウェアの定期的なメンテナンス、トラブルシューティングや機器の修理、データのバックアップ、アップデートの適用などを行います。
ITインフラ運用において、保守は予防保全や緊急時の対応といった観点から不可欠な要素です。
以上をまとめると、ITインフラ運用はIT関連のインフラ全般の管理やシステム最適化のための活動であり、保守は機器やシステムを確実に動作させるために必要な活動であるといえます。
ITインフラ運用の重要性
ITインフラ運用は、多くの企業にとって非常に重要な要素です。
サーバーやネットワーク機器がダウンしてしまうなど、ITインフラにトラブルが発生すると、社員が業務を進められなくなり、事業活動が中断・停止して顧客に満足なサービスを提供できなくなる恐れがあります。それにより、ビジネスに深刻な影響を与えることも珍しくありません。
このような事態を回避するためにも、安定的かつ適切なITインフラ運用を実施することが求められ、トラブルが発生した場合には早期に発見しスムーズに対処できる体制を構築することが不可欠です。
また、適切なインフラ運用によってシステムやネットワークが安定的に動作することで、企業の生産性や競争力の向上も期待できます。反対にシステムやネットワークの動作に遅延や障害が頻発すると、生産性を低下させることにつながります。
このように非常に重要な役割を持つITインフラ運用について、次章では運用する際の作業内容を解説します。
ITインフラ運用の作業内容
ITインフラ運用には、主に以下3つの作業内容があります。
システム監視
ネットワークやサーバーの稼働状況が正常であるかチェックするため、機器や設備を監視します。ウイルスや不正アクセス、サイバー攻撃などが起こっていないかを判断し、異常を観測した際は記録をとります。
また、機器の稼働・パフォーマンスの状況やメモリの使用・残りの空き容量などの確認を行うこともシステム監視の一環です。
メンテナンス
プログラムの一部を更新してバグを修正するパッチ適用やアップデートなど、日常的にメンテナンスを行い、安定的な運用に支障が出ないようにします。
トラブル対応
システムにトラブル・障害の兆候が見られたときに、一次対応を行い保守へエスカレーションします。一次対応としては、サーバーの再起動や各部の点検など、システム運用の範囲内での障害対応を行うことが一般的です。
一次対応で対処できない場合は、システム責任者や保守の担当者へと対応を引き継ぎますが、その際には現状の対応内容や解決できていない問題点などを正確に把握し、適切に情報共有することが大切です。
ITインフラのベストプラクティス
ITインフラ運用にはさまざまな作業内容がありますが、特に行っておくべき「ベストプラクティス」としては以下の5つが挙げられます。
作業の自動化
ITインフラ運用の内容には、手作業で行うものも少なくありません。
そうした作業を各種のツールを活用して自動化することで、属人的なミスを減らし、作業時間を短縮できます。手作業の場合は人によって作業手順が異なることがよくありますが、自動化に成功すれば、常に一定の手順に沿って作業が進むため再現性が向上し、サービスの安定性を維持することができます。
自動化を実現できる具体例としては、パッチ適用やモニタリング、サービスのデプロイなどに関する作業が挙げられます。
セキュリティ強化
コンピュータウイルスやマルウェアなどサイバー攻撃の脅威が進化している昨今、ITインフラ運用におけるセキュリティの強化は、企業内部の機密情報や個人情報、各種データを悪意ある攻撃から守るうえで非常に重要な役割を担っています。
ITインフラ運用におけるセキュリティ上の脅威は、ウイルスやマルウェアのほか、ハッキングやフィッシング詐欺などさまざまなものがあります。
これらの脅威に対し、いかにシステムの機密性(不正アクセス等から保護されていること)や可用性(サービス等が利用可能な状態であること)、完全性(不正な変更や改ざんから保護されていること)を維持するかが重要です。
必要な対策としては、主に以下のものが挙げられます。
●ファイアウォールの導入による不正アクセスの防御
●必要最小限のアクセス制限付与による不正アクセス、情報漏洩の阻止
●セキュリティパッチやアップデートの迅速な適用による既知の脆弱性への対処
●セキュリティログの収集・分析による不審なアクティビティの検知
●パスワード管理の徹底や多要素認証の導入によるアカウントの不正利用の阻止
また、従業員に対して情報セキュリティに関わる研修を実施したり、セキュリティポリシーの見直しや策定をしたりすることも効果的です。
クラウドの活用
インターネット環境を通じてサービスを利用するクラウドの活用も、ITインフラを柔軟かつ円滑に運用するうえで重要です。
クラウドサービスは、基本的なITインフラストラクチャを提供するIaaS、アプリケーションを開発・実行するためのプラットフォームを提供するPaaS、ソフトウェアアプリケーションを提供するSaaSなど、多くの種類があります。
クラウドを活用することで、スケーラビリティの向上やコスト削減などのメリットを得られます。
モニタリングの徹底
システムやアプリケーション、ネットワークなどのインフラストラクチャの動作やパフォーマンスを定期的、またはリアルタイムでモニタリングすることも重要です。
モニタリングによって、トラブルが発生した際に迅速に対応できるほか、システムの状態を把握することで負荷分析や容量計画、障害やエラーの原因の迅速な特定などにも役立ちます。
モニタリングによって得られる各種の情報は、ITインフラに関する問題の解決のための情報として活用可能です。たとえば、サーバー、ストレージ、ネットワークなどのリソースの使用状況をトラッキングすることで、負荷分散を見直したり、リソースを効率的に配分したりできます。
ネットワークの障害発生時には、ネットワークトポロジー(PCや通信機器等の接続のされ方)を検証し、見直すことで解決につなげることも可能です。
このように、モニタリングを通じた状態把握や問題の早期発見は、ITインフラの安定運用にとって不可欠だといえます。
人材育成
ITインフラを適切に運用するためには、専門知識や高度なスキルを持つ人材を確保する必要があります。そうした人材の育成も、ITインフラの安定的な運用に大きく貢献します。
ITインフラ運用に必要な知識として、具体的にはネットワークやOS、データベースなどに関する技術知識や、バックアップ、セキュリティなどに関する運用知識が挙げられます。
より短期的には、即戦力人材の採用も選択肢に入りますが、こうしたスキルや知識を持つ人材は引く手あまたであり、キャリア採用を通じて人材を確保するのは簡単ではありません。時間はかかるものの、自社で基礎知識やスキルを習得するプログラムや実践的な研修、さらに実務も通じて専門人材を育成することが重要になります。
育成にあたっては、実際にハードウェアやソフトウェアなどのIT環境を整えたうえでシミュレーションを重ねたり、スキルを持つ人材が直接指導したりするなどの活動により、育成環境を整えることが大切です。
ITインフラ運用の業務負荷がもたらすリスクとは
ITインフラは、業務を滞りなく行うために重要なものであり、適切に運用管理しなければなりません。しかし、作業範囲が広く、担当者の工数が逼迫してしまうこともあります。情シス部門の負担が大きくなるとさまざまなリスクがあるため、コア業務に集中できる環境を整えることが求められます。
以下の資料では、情シス部門の業務負担が増加することによるリスクとその解決策を解説していますので、ぜひご覧ください。
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