会社のPC監視はどこまで?
合法な範囲とツールの選び方を解説
この記事では、監視が許される法的範囲と導入時の注意点、最適なツールの選び方を解説します。

テレワークの普及で必要性が高まる会社のパソコン監視
テレワークやリモートワークが普及し、従業員の働き方が多様化する中で、会社が勤務状況を直接確認する機会が減少しました。また、 オフィス外での業務が増えたことにより、労働時間の正確な把握や、機密情報の取り扱いに関するセキュリティリスクへの懸念が高まっています。
このような背景から、従業員のPC利用状況を遠隔で把握するモニタリングの必要性が増しており、適切な労務管理と情報セキュリティ体制の構築のために監視ツールの導入を検討する企業が増加しています。
会社が従業員のパソコンを監視する3つの目的
企業が従業員のPCを監視する背景には、主に下記3つの目的が存在します。
①従業員の労働時間を適切に管理するため
PCの監視は、客観的なデータに基づいた正確な労働時間管理を可能にします。
正確に把握でき、自己申告制に伴うサービス残業や過少申告といった問題を是正するのに役立ちます。
特に、勤務状況が見えにくいテレワーク環境下において、客観的な記録は長時間労働の早期発見と抑制につながり、従業員の健康管理を推進する上でも有効です。
これにより、労働安全衛生法などの法令を遵守し、適切な労務管理体制を構築することにつながります。
②機密情報の漏洩といったセキュリティリスクを防止するため
企業の機密情報や個人情報の漏洩は、事業継続に深刻な影響を及ぼす可能性があり、こうした内部からの情報漏洩リスクを低減させるためにPCの監視は重要です。
例えば、ファイルへのアクセス履歴や、USBメモリなどの外部記憶媒体へのデータコピーといった操作をログ監視することで、不正情報の持ち出しを検知・追跡できます。
また、個人メールアドレスへの重要ファイルの送信や、クラウドストレージへのアップロードといった不審な操作を監視し、アラートで通知する機能も有効です。
これらの監視体制は不正行為の抑止力としても機能し、企業の情報資産の保護につながります。
③業務の生産性を可視化して改善につなげるため
PCの操作内容を記録・分析することで、従業員や組織全体の業務生産性を客観的に評価し、改善につなげることができます。
具体的には、どのアプリをどのくらいの時間使用しているか、業務に無関係なWebサイトを閲覧していないかといった活動をデータで可視化します。
これにより、業務プロセスのどこにボトルネックがあるのか、あるいはどのような作業に時間がかかっているのかを特定できます。
取得したデータは、単に監視するためだけではなく、業務配分の見直しや従業員への適切なフィードバック、ひいては組織全体の生産性向上施策の立案につながります。
会社のパソコン監視で把握できる具体的な内容
PC監視ツールを導入することで、社内PCにおける従業員の様々な操作を記録・把握できます。
PCの起動・シャットダウンやアプリケーションの使用履歴
監視ツールは、PCの起動・シャットダウンを正確に記録し、客観的な勤務時間の証明として勤怠管理に活用できます。さらに、主要アプリケーションの利用時間も把握することができます。
これにより、作業の偏りや効率の悪い部分を分析し、業務改善や最適な人員配置に役立てられます。
ウェブサイトの閲覧履歴や検索キーワード
業務時間中の閲覧URLやタイトル、滞在時間といった詳細な履歴を記録できます。
これにより、業務とは無関係なサイトの私的利用や、非効率なネットサーフィンといった行動を把握することができます。 また、Googleなどの検索エンジンで入力された検索キーワードも取得できるため、従業員の業務内容や関心事を推測する手がかりにもなります。
不適切なサイトやマルウェア感染の危険があるサイトへのアクセスを検知し、ブロックする機能を持つツールもあり、生産性の維持とセキュリティリスクの低減の両方に貢献します。
メールやビジネスチャットの送受信内容
業務用アカウントで行われるメールやビジネスチャットのやり取りを監視対象とすることもできます。
ツールによっては、送受信日時、宛先、件名だけでなく、メール本文や添付ファイルの中身まで記録・保存できます。 この機能は、機密情報の不正な外部送信や、顧客との不適切なコミュニケーション、社内でのハラスメント行為などを検知し、早期に対応するために用いられます。
ただし、通信の秘密やプライバシーに関わる非常にデリケートな情報であるため、監視の目的や範囲を厳格に定め、従業員への十分な周知と理解を得た上で慎重に運用する必要があります。
ファイルへのアクセスや操作の記録
サーバーや個人のPCにあるファイルに対して、誰が、いつ、どのファイルにアクセスし、どのような操作を行ったかを詳細に記録できます。
記録される操作には、ファイルの作成、閲覧、編集、コピー、移動、名称変更、削除などが含まれます。 このログ監視機能により、重要情報や個人情報ファイルへの不正アクセスや改ざん、持ち出しといったインシデントが発生した際に、原因を迅速に特定し、追跡することができます。
また、アクセス権限のない従業員によるアクセス試行を検知することもでき、内部不正に対する強力な抑止力として機能します。
次章では、こうした監視が合法か違法かの判断基準について解説します。監視の目的や範囲をどのように設定すべきか、法的観点から確認していきましょう。
会社のパソコン監視は違法?合法と判断される範囲を解説
業務上の正当な理由があれば監視は基本的に合法
企業が従業員のPCを監視する行為自体が直ちに違法と判断されるわけではありません。
情報漏洩の防止、企業の施設や情報の適切な管理、従業員の服務規律の遵守、あるいは正確な勤怠管理といった、業務を遂行する上で合理的かつ正当な目的がある場合、そのモニタリングは基本的に合法と解釈されます。
一般的に、企業の円滑な業務運営を目的とした監視は、必要性が認められる範囲で行われます。
私的な情報の過度な閲覧はプライバシー侵害にあたる可能性
監視の目的が正当であり、事前の周知があったとしても、その手段や程度が社会通念上相当な範囲を超えている場合は、プライバシー侵害として違法と判断される可能性があります。 その監視はあくまで目的達成のために必要な限度にとどめるべきであり、業務上の必要性を逸脱した過剰な監視は、権利の濫用とみなされる恐れがあります。
例えば、業務に関係のない私的なメールやチャットの内容を詳細に閲覧したり、業務時間外の利用状況まで細かくチェックしたりする行為は、監視の必要性を逸脱していると見なされるリスクが高いです。
また、PCに内蔵されたカメラを本人の許可なく作動させたり、GPS機能で常に位置情報を追跡したりする行為は、個人のプライバシーを侵害する恐れがあります。一方で、業務用PCの紛失や盗難を防ぐといった業務上の正当な目的がある場合には、一定の範囲で位置情報の利用などが認められることもあります。
パソコン監視システムを導入する前に企業が注意すべきこと
PCの監視システムを導入する際は、システムを導入するだけでなく、法的リスクを回避しながら従業員との信頼関係を維持するための事前準備が欠かせません。そこで、本章では3つの注意すべき点を解説します。
就業規則にパソコンを監視する旨を明記する
PC監視を制度として正式に運用するためには、その根拠となる規定を就業規則に明記することが不可欠です。
具体的には、「企業は、情報セキュリティの確保および適正な労務管理のため、従業員に貸与した社内PCの利用状況(電子メールの送受信記録、Webサイトの閲覧履歴等を含む)を記録し、必要に応じて内容を確認することがある」といった趣旨の条項を追加します。
これにより、監視が会社の公式なルールに基づいて行われる正当な業務監督の一環であることを明確化できます。また、この規定は、従業員への事前通知という法的要件を満たす上でも重要な役割を果たします。
従業員に監視の目的や範囲を丁寧に説明し理解を得る
就業規則への記載と合わせて、従業員に対して監視の目的、対象範囲、取得する情報の内容などを具体的に説明する機会を設けましょう。 説明の際には、「監視」という言葉が与えるネガティブな印象を和らげることが重要です。
情報漏洩防止による会社の資産保護、長時間労働の是正といった、従業員にとっても利益となる側面を強調して伝えることが効果的です。従業員が内容を十分に理解し、疑問点を確認できる場を提供することで、不信感や反発を最小限に抑えられます。
監視する内容は業務に必要な範囲に限定する
先述の通り、監視によって取得するデータは、設定した目的を達成するために真に必要なものだけに限定しなければなりません。
例えば、勤怠管理が目的ならばPCのログイン・ログアウト時刻の記録で十分であり、キーボードの入力内容まで記録する必要性はありません。
目的と手段のバランスを欠いた監視を行わないように注意が必要です。
自社の目的に合ったパソコン監視ツールの選び方
機能や価格が異なる多種多様なPC監視ツールがあるため、目的に合わないツールを選ぶとコストの無駄や期待する効果が得られない可能性があります。 そのため、導入目的を明確にした上で、「機能」「コスト」「操作性」の3つの観点から、自社にとって最適な監視ツールを選定することが重要です。
機能:監視したい項目を網羅できる機能があるか確認する
まず、自社がPC監視を行う目的を明確にすることが重要となり、目的によって必要となる機能が異なります。 例として以下が挙げられます。
・勤怠管理の適正化
PCのログイン・ログアウト時間の記録や非アクティブ時間の計測機能
・情報漏洩対策
ファイルの操作ログ監視・外部デバイスの制御・特定のキーワードが含まれるメール送信のアラート機能
・生産性向上
アプリケーションの利用状況分析・Webサイトの閲覧履歴レポート機能
事前に必要な機能要件をリストアップし、各ツールの機能がそれを満たしているかを確認しましょう。
コスト:導入コストや月々の利用料金が予算内に収まるか検討する
監視ツールの価格体系は、初期費用のみで利用できる買い切り型や、利用するPC台数に応じて月額料金が発生するサブスクリプション型など様々です。
自社の予算規模を把握し、導入時にかかる初期費用と、継続的に発生する月々のランニングコストの総額を算出して比較検討しましょう。
また、高機能なツールはそれだけ費用も高くなる傾向があるため、自社にとって不要な機能が含まれていないか、コストと機能のバランスが適切かを見極めることが肝心です。
多くの監視ツールで無料トライアルが提供されているため、費用対効果を事前に検証することも有効な手段です。
操作性:誰でも直感的に使えるシンプルな操作性かチェックする
監視ツールは導入して終わりではなく、情報システム部門や人事部門の担当者が日常的にデータを分析し、活用して初めて効果を発揮します。 そのため、PCの専門知識がない担当者でも直感的に操作できる、分かりやすい管理画面であることも重要です。
無料トライアル期間などを利用して、実際に管理画面に触れてみること、データの見やすさやレポート作成の容易さなどを確認し、誰でもストレスなく使いこなせるツールを選ぶことが、継続的な活用の鍵となります。
まとめ:会社のパソコン監視について
企業におけるPC監視は、不正アクセスや情報漏洩といったリスクを防ぎ、業務の適正な運用を維持するために重要な仕組みですが、適切なルールのもとで実施しなければ違法性が疑われたり、従業員の不信感につながったりします。
そのため、先述の注意ポイントに気を付けながら運用していく必要があります。
とはいえ、実際には「監視ルールや運用の整え方がわからない」「社内の情報セキュリティ体制が不十分で不安がある」と、お悩みの声も多く聞きます。
そこで、情報セキュリティ対策の基本をまとめた実践ガイドをご用意しました。
社内のセキュリティ体制を見直したい方は、ぜひご活用ください。


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